exhibition
【作家ステイトメント】
30年前2人で作品を並べてから、こんなに時間が過ぎている。「時間や記憶」を刻むような腐食銅版画家の井出、そして三井田は散文のように版画、ドローイング、ペインティングを描散する。
タイトルの「露時雨」は井出の提案による。秋の季語になる。井出の扱う銅版画は時間を記憶していくようである。エッチングに真っ黒な塩化第二鉄という腐食液を使う。銅版はこの漆黒の液体の中でイメージが刻まれる時を待つ。井出の作品は、常に時間の流れに関わっている。この銅版画はそれが据えられた場所の時間や記憶まで引き出してしまう。
三井田の時間は静止している。作品に現れる“出来事のようなもの”は重力のない箱の中にゆらゆらとただ浮かんでいる。取り出されると、この出来事は始まるのかも知れないが、紡がれてきた記憶でもなく、断片化されたイメージだ。
「露時雨」には動と静が同居する。井出創太郎の作品は時雨のように静かに降り落ち来て流れ続ける。露は現れては消えて明滅する夢のようなもの。三井田のイメージに困ったことが起きていても、明滅の奇妙な刹那が刻み付けられてしまっているのだ。
井出創太郎
《piacer d’amor bush<水滴路>》
2023年
エッチング緑青刷り
187㎜×124㎜ (シートサイズ:720×480㎜)
三井田盛一郎
《巨人―大地になるまでもう少し》
2023年
カンヴァスに油彩
727x606 cm
【作家略歴】
井出 創太郎 Ide Sotaro
1966年 東京都東久留米市に生まれる。
学歴
1989 愛知県立芸術大学美術学部美術科絵画油画専攻卒業(芸術学士)
1991 愛知県立芸術大学大学院美術研究科絵画油画専攻修了(芸術学修士)
【主な個展】
2000 井出創太郎 piacer d’amor bush<淺井宅>展(MARIKO ASAI STUDIO・東京都千代田区外神田3丁目)
2001 井出創太郎「相倉/その光と襖」展-piacer d’amor bush<相倉>-(世界遺産相倉合掌造り集落相倉旧山崎家・富山県)
2006~2009 重要文化財渡部家住宅公開活用事業 井出創太郎「渡部家住宅その光と記憶」展(国指定重要文化財渡部家住宅・愛媛)
2013 井出創太郎 piacer d'amor bush<来迎寺>(来迎寺・千葉)
2015 井出創太郎「蘭塔婆からの便り 系譜の山への便り」(ギャルリィプチ・ボワ・大阪)
2019 井出創太郎「光射の器 島の影」(MEGI HOUSE・香川)
2021 井出創太郎『piacer d’amor bush <版と言葉/DD>』 展(ひらく本屋/岐阜)
2023 井出創太郎展「種蔵の影」(ギャルリ プチボア・大阪)
【ユニット 井出創太郎+高浜利也 主な活動歴】
2003 井出創太郎「棲家/その光と闇」piacer d'amor bush<片瀬>+高浜利也「Enoshima Project」(井出宅・神奈川)
2006 大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ 井出創太郎+高浜利也「小出の家」(小出の家・新潟)
2007 名古屋市民芸術祭2007主催事業「Rooms」(名古屋市民ギャラリー矢田・愛知)
2008~現在 落石計画 (旧落石無送線送信局・北海道)
2013 落石計画クロニクル2008-2015(アートラボあいち・愛知)
2019 つくる、くちる、つくる、 落石計画 井出創太郎+高浜利也(網走市立美術館・北海道)
【主な展覧会】
1994 二人展(伽藍洞ギャラリー・愛知)
1994 現代の版画1994(渋谷区立松濤美術館・東京)
1996 絵画の方向’96(大阪府立現代美術センター・大阪)
1997 現代日本美術の動勢「版/写すこと/の試み」(富山県立近代美術館・富山)
2000 旅籠町町屋プロジェクト−旅籠町最後の町家に4つの思考の風が吹く−(佐藤宅・東京)
2003 平行芸術展―あざやかの構図―(小原流会館・東京)
2005 銅版画の地平Ⅲ「現代銅版画の交差点」(ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション・東京)
2007 愛媛県県民総合文化祭20周年記念事業「COLOURS OF EHIME」(愛媛県美術館常設展示室・愛媛)
2011 AICHI GENE-some floating affairs-EXHIBITION 2(はるひ美術館・愛知)
Double Diablegrig(ロイヤルスコティッシュギャラリー・スコットランド)
2013 第1回PATinKyoto京都版画トリエンナーレ2013(京都市美術館・京都)
2014 女木島「Whereabouts of prints-系譜の書-」(MEGIHOUSE・香川県女木島)
2019 瀬戸現代美術展2019(瀬戸サイト・愛知)
2021~現在 光射す器/種蔵の影(種蔵集落内板倉・岐阜)
三井田盛一郎 Miida Seiichiro
1965年 東京生まれ
1992年 東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻 卒業
1993年 東京芸術大学大学院美術研究科修士課程(版画)中退
現在 東京藝術大学版画研究室 教授
【展覧会】
1992年 ‘92版画「期待の新人作家」大賞展 大賞受賞
1996年 第25回現代日本美術展 佳作賞受賞(東京都美術館、京都市美術館)
1997年 リュブリアナ国際版画ビエンナーレ展 コミッショナー:針生一郎
1998年 VOCA展‘98 上野の森美術館 Work ‘97”景色のある”
1999年 Exhibition MIIDA SEIICHIRO InnGalerie(オーストリア)
2000年 町田市立国際版画美術館作家招聘 次代をになうアーティスト達①三井田盛一郎展
2002年 木村秀樹・三井田盛一郎・吉岡俊直 展ギャラリー旬(名古屋)
2003年「JOINT RESEARCH & DEVELOPMENT展」ディー・クライネギャラリー(ウィーン)
2004年 “Ispa JAPAN NAGOYA” 「日本の木版画100年展−創作版画から新しい版表現へ−」
名古屋市美術館(同美術館、大学版画学会主催)
「JOINT RESEARCH & DEVELOPMENT展」 SCHLOSS LANDECK(ランデック市美術館/オーストリア)
2004年 Ispa JAPAN「国際現代版画展—The PLATE」*東京芸術大学大学美術館陳列館
2006年 EXHIBITION 2006 a landmark MIIDA SEIICHIRO GALLERYゆう(岐阜、大垣)、EXHIBITION a plate MIIDA SEIICHIRO ギャラリー旬(名古屋)
2007年 GRAPHICA/Final Destinations 京都市美術館
2009年 EXHIBITION MIIDA SEIICHIRO 尾道市立白樺美術館(現尾道市立大学美術館)
2012年 PAPER-UNPAPAER MUSEUM of China Central Academy of Fine Arts中央美術学院
2013年 Print Art Trienniale in Kyoto 京都市美術館
2014年 「木版ぞめき―日本でなにが起こったか―」東京藝術大学大学美術館
三井田盛一郎展 アートゾーン神楽岡(京都)
2015年 Exhibition MIIDA SEIICHIRO – “岸壁の父母-此の人の月日” Higure17−15 cas
「版画とコード・会議と展覧会」 四川美術学院 (重慶・中国)
Exhibition MIIDA SEIICHIRO – “岸壁の父母-此の人の月日” Higure17−15 cas
2017年 日中交流展「紐帯」寧波美術館(中国 寧波)
2020年「共鳴する刻[しるし]―木口木版画の現在地」CCGA現代グラフィックアートセンター(福島)
2021年 版は物語る 文房堂ギャラリー(東京、神田)
2023年 「怪獣の眼」GALLERY KTO(東京、表参道)
他、個展多数
井出創太郎・三井田盛一郎 二人展
「露時雨」
2023年10月28日 (土) 〜 2023年11月7日 (火)
Sat Oct 28th 2023 〜 Tue Nov 7th 2023